研究課題
【目的】心血管再生医療に関するトランスレーショナル研究には、今まで一定の限界があった。生体内における血管新生および心筋の生存には、エリスロポエチン(EPO)のアシアロ体であるアシアロEPO(AEPO)が生理的に重要な働きをしている。AEPOの作用機序を明らかにすることで、心血管再生医療の前臨床的な基盤研究を行う。【平成22年度までの結果】肺血管障害モデルに対する各種EPO誘導体投与の効果を検討した。EPO投与により肺血管内皮障害が抑制され右心機能が改善したが、AEPOやCEPO(カルバミルEPO)投与は無効であった。AEPOは血中濃度が上昇しないため無効で、血管内皮には造血系と同様にEPOホモ受容体(EPOR/EPOR)が発現しているためにCEPOが無効であったと考えられた。マウス下肢虚血モデルを各種EPO誘導体投与により治療した。血管新生作用はAEPO>>EPO=CEPOであった。In vitro angiogenesisでは内因性IL-6の存在下にEPO=AEPO>CEPO=0の血管新生作用が観察された。ラットで冠動脈閉塞再環流モデルを作成し、各種EPO誘導体の持続静注によって治療した。EPOによって心筋梗塞の縮小が見られたが、多血症による心負荷の増大が同時に観察された。AEPOによって、より強力に心筋梗塞の縮小が観察され、また多血症が誘発されなかった。【平成23年度の結果】EPOの糖鎖は末端のシアル酸によって陰性に荷電し、AEPOの糖鎖は末端のガラクトースによって陽性に荷電する。組織細胞外マトリックスの主成分であるグリコサミノグリカン(GAG)はその硫酸基によって陽性荷電物質と相互作用することから、AEPOはGAGを介して組織親和性を示すことを想定した。Heparin-Agarose Gel Chromatographyを用いた結果EPOはGAG親和性を欠き、AEPOはGAG親和性を示した。マウス大腿筋注を用いた組織内薬物動態の解析の結果、AEPOは最初の6時間は急速に組織内濃度が低下したが、その後24時間までは一定の組織内濃度を保った。EPOは24時間持続的に筋内濃度の指数関数的低下を示し続けた。【展望】新潟TLOと特定の製薬業者との共同による臨床開発の協議を開始した。
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