抗不整脈薬を安全に使用するために、抗不整脈薬によって生じる多形性心室頻拍(Tdp)の発症基盤の特徴・発症した場合の治療法について、心臓立体マッピング法を用いて検証する研究を継続総括した。ビーグル犬を静脈麻酔下に人工呼吸管理を行い、多極針電極を用いて心室貫壁性(心内膜・心筋中層・心外膜)の心臓立体マッピングを行った。体表面心電図を装着して心内外の電気現象の相関を検討した。迷走神経管と星状神経節刺激を用いて自律神経興奮を調節した。 研究結果: (1)心内再分極分布:抗不整脈薬によって心臓再分極分布が不均一化した。再分極分布の不均一性は、長軸方法(心基部vs.心尖部)、水平方法(中隔側vs.自由壁側)、貫壁方向(心内膜vs.心外膜)において増幅し、伝導障害の基盤が誘導された。 (2)立体的に変化する心臓再分極分布が、体表面心電図に反映される過程をコンピュータ解析で検証した。四肢誘導から求めた心電図再分極指標(Tp-e)は心臓全体の立体的再分極不均一性を反映していたが、局所の心室貫壁性の再分極不均一性には一致しなかった。 (3)交感神経緊張による不整脈発症の閾値は抗不整脈薬の種類によって異なった。ベプリジル・アミオダロンは交感神経興奮の際の不整脈発症に抑制効果を示す可能性が示された。 (4)心室細動の周波数解析で、dominant frequencyは心臓の各部位で異なる傾向が示された。 (5)治療効果は抗不整脈薬の種類によって異なる傾向がみられた。オーバードライブペーシングの効果は、アミオダロン・ベプリジルよりもanthopleirin-A・E4031でより顕著であった。マグネシウム静注による治療効果は、anthopleirin-A以外の薬剤では不整脈基盤の不均一性の是正よりも、トリガー早期興奮の抑制にある可能性が示された。
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