研究課題
我々は、内因性ステロイド物質が、食塩感受性を介して拡張不全発症機序・病態に関与しているという仮説を構築した。我々のpreliminaryな実験では、内因性ステロイド物質の一つであるouabainは特に高食塩にさらされている状況において、心筋に直接働き、特に線維化を亢進させる可能性が示唆された。また、Na+/Ca2+ exchanger (NCX) reverse modeを選択的に阻害するSEAO400を血圧低下させない0.3mg/kgのSEAO400の投与が行われた高食塩食群は、高食塩食のみを負荷した群に比し、拡張不全の発症が抑制され、有意に予後が改善したことは、NCX reverse modeを修飾することによって、拡張機能を改善し拡張不全の進行を抑制する可能性を示唆したものと考えられた。以上の結果をもとに今年度は次の研究を行った。・内因性ステロイドの拡張不全発症機序ウアバインを心筋線維芽細胞に投与したところ、細胞外カルシウムの流入を増やす形で細胞内カルシウム濃度を上昇させ、p41/44 MAPkineseのリン酸化を亢進させ、3H-prolinの取り込みを亢進させた。これらの影響は、SEAO400により抑制された。このような機序を介して、心筋細胞のCa overload、さらに線維化亢進をもたらし、これらが拡張不全発症に寄与すると考えられた。以上より、この3年間の研究を通して、内因性ステロイドは主にNCX reverse modeを活性化することにより高血圧性拡張不全発症に関係し、その阻害薬は、拡張不全治療に寄与すると考えられた。今後は、さらに内因性ステロイドに対する治療戦略の構築を目指し、創薬につなげていきたいと考える。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
European Heart Journal
巻: (In press)