研究課題
平成23年度の研究計画では、平成22年度の研究成果を受けて(1)臨床例におけるAT1R(1166A→C)多型の影響を、より具体的に種々の患者背景の下、層別に検討すること、(2)アンジオテンシンII刺激によりそのネガティブフィードバック機構の一部としてMiR155の産生が亢進し、アンジオテンシン受容体(AT1R)の翻訳が抑制されること、そしてその抑制が(1166A→C)多型を有する細胞において減弱する仮説を証明することを目的とした。前者については、AT1R(1166A→C)多型が高血圧と関連して心血管事故増大に関与することが示されたOACIS研究登録3,300例を用い一般集団1000例を対照に解析を行った。しかし、本多型が高血圧と関連して心筋梗塞発症(一次予防)に寄与するか否かは、患者背景、特に症例・対照の年齢差が大きく、背景の補正後には統計的な確証は得られなかった。しかし今回、梗塞症例数の増加により、投与薬剤ごとの層別検討を実施することができた。多型の存在により増加する心筋梗塞後の心血管事故発生率が、スタチン投与例では低率であること、一方ACEI、ARB、β遮断薬はその効果が認められないことが示された。今後その機序に関する検討が必要である。後者に関して、血管平滑筋細胞や内皮細胞など動脈硬化に関わる細胞種においてアンジオテンシンII刺激により、MicroRNA155が産生されることが確認できた。MiR155の産生は、AT1Rの翻訳を抑制したが、そしてその抑制が多型を有する細胞において減弱していることは、反応が微量であり確認が困難であった。一方、心筋梗塞生存退院例で早期に心臓死をきたした症例では血清中のMiR155濃度が高いことが今回の検討で明らかとなった。現在この心臓死亡の詳細を調査中ではあるが、通常心臓死を呈する症例ではレニンアンジオテンシン系が亢進していることを考え合わせると、レニンアンジオテンシン系亢進に対するネガティブフィードバックとしてMiR155産生と、その受け皿としての多型との関与の検討をさらに進める必要があることが示された。
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