研究概要 |
【具体的研究内容】耳朶線条(Earlobe creases、以下ELC)の簡易定量化を達成し、ELCの程度と動脈硬化進行度との正の相関関係を明らかにした。皮膚しわの定量方法には、従来からあるシリコンゴムを用いたシワのレプリカ作成による間接的計測法と、最新の光学3次元測定装置(ドイツGFM社製PRIMOS, PICO)を用いた3次元計測法とがある。我々はこれらの方法でELCを計測し3次元測定法がELC測定において有用であるかを検討した。ELCを有する外来または入院患者10名を対象とし、レプリカ法による間接測定と3次元直接測定法にてELCの平均深さの測定を行った。統計学的解析により両者に極めて高い相関を認めた(相関係数r=0.979、寄与率R^2=0.958; P<0.001)。次に我々は、ELC患者13名に頸動脈超音波エコー検査を行い、内膜中膜複合体厚(IMT)・プラークナンバー(PN)・プラークスコア(PS)の計測を行った。その結果、それぞれELCと正の相関関係が認められた(IMT ; r=0.569, R^2=0.323, P<0.043、PN ; r=0.771, R^2=0.594, P<0.002、PS ; r=0.797, R^2=0.635, P<0.001)。寄与率から判断すると、ELCの程度とPS>PN>IMTの順に強い関係が認められた。[意義・重要性]これまでELCの程度の評価は視診によるものしかなく、生体での定量的な計測はなかった。そのため研究者間の評価法の違いにより動脈硬化の指標との関連性を述べるにあたってはその信頼性に問題があった。光学3次元計測装置は小型軽量であり非接触性・短時間のELC計測が可能である。今後、多数の患者のELC測定に有用と考えられた。本研究でELCの簡易定量化が可能となったことから、これまで不明であったELCの程度が動脈硬化の程度と相関することが明らかになった。ELCの程度が動脈硬化の程度を予測し得るかどうか、さらに多人数での検討を行う予定である。
|