研究概要 |
[具体的研究内容] 前年度までの研究にて、光学3次元皮膚性状測定装置(ドイツGFM社製PRIMOS,PICO)による耳朶線条(earlobe creases)の深さを定量化する方法を開発した。それにより耳朶線条の深さが頸動脈プラークの進展と強く相関していることを明らかにした。しかし、耳朶の形状変化(耳朶線条)が動脈硬化の程度を反映する機序は不明であった。今年度は、耳朶線条が他の部位の皮膚の形状変化と関連しているかを、目尻と前腕屈側部の皮膚形状を比較して検討した。 1.光学3次元皮膚性状測定装置で測定した皮膚の前腕屈側部の皮膚表面平均荒れ度(Ra :a verage roughness)は年齢と良い相関関係があり、加齢の指標となることが確認された。2.目尻の皺と耳朶線条の平均深さには相関は認められなかった。3.目尻の皺平均深さと頸動脈硬化の指標(超音波検査で計測したプラークスコア)とは相関関係が認められなかった。4.Ra,目尻の皺、耳朶線条による多変量解析にてプラークスコアの独立した変数は耳朶線条の深さのみであった。 [意義・重要性] 加齢の指標には前腕のRaが、動脈硬化の指標には耳朶線条が有用であった。 同じ頭部の皮膚の変化でも、顔面表情筋上にある目尻の皺と静止部位の耳朶線条では、形成過程や成因が違うことが示唆された。老化にて皮膚の皺(前腕屈側部)は形成されるが、目尻の皺はそれ以外の外的要因(日光照射や表情筋による進展や収縮)の影響を強く受けると考えられる。また、目尻の皺は動脈硬化とは関連が認められない。以上から、耳朶線条は頭部の皮膚で動脈硬化を反映する特異な存在であることが明らかになった。
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