研究課題
抗血小板薬シロスタゾールはphosphodiesterase-3 (PDE-3)阻害作用により血小板活性化を抑制する薬剤であり、閉塞性動脈硬化症(ASO)や脳梗塞の治療に用いられる。最近このシロスタゾールに再内皮化誘導作用が期待される実験成績が示された。しかしながらSES後の傷害血管における再内皮化・血管修復に対する有用性は明らかとなってはいない。本研究はシロスタゾールがSESステント植え込み後のEPCの動員、内皮細胞への分化に及ぼす影響、再内皮化誘導作用を基礎的、臨床的に検討し、DESにおけるシロスタゾール療法の有用性を検討することを目的とする。今年度はシロスタゾールはPDE-3阻害によりc-AMPを増加させ、protein kinase A (PKM)を活性化することでその作用を発揮する。シロスタゾールによるシロリムスの内皮細胞への分化抑制の改善効果が明らかとなったので、PKA阻害により抑制されるかどうかを観察することにより、シロスタゾールのこうした効果がPDE-3阻害作用によるものかどうかを検討した。上記実験で単核細胞の内皮細胞メディウムでの培養に際し、シロリムス(0.1ng/mL)、シロスタゾール(もっとも強力な効果の得られた濃度)に加え、PKA阻害薬myristoylated cell-permeable PKA inhibitor peptide sequence(14-22) amide (PKAI) (1μM)を添加した場合の内皮様細胞への分化を観察した。シロスタゾールの内皮細胞への分化誘導効果はPKAIにより抑制された。臨床的検討としてSESステント植え込み例に対し、シロスタゾール投与後の骨髄幹細胞の動員、ステント植え込み部位局所の再内皮化を評価し非投与群との間で比較検討した。現在まで症例数が10例登録され、引き続き経過観察中である。
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