本研究では、抗血小板剤であるクロピドグレルを内服している安定労作狭心症例における待機的PCI施行前後に血小板機能凝集能と血小板関連マーカーの血中濃度の推移を測定し、PCI前後に有意に変動するマーカーを同定することを目的としている。血小板凝集能の測定には、従来の透過光測定法に加え、簡易測定法であるVerify Now Systemを用いて抗血小板剤の有効性を検討した。予備検討として当科に入院した心臓カテーテル検査、冠動脈形成術施行予定患者に対し、ADP惹起血小板凝集能を測定した。また、クロピドグレルの低反応性に関与すると考えられるCYP2C19遺伝子多型を解析し、クロピドグレル低反応性が上述した血小板凝集能や血小板関連マーカーにどのような影響を及ぼすかについて検討した。CYP2C19遺伝子多型を有する、いわゆるCarrier例においてはクロピドグレルのADP凝集能抑制効果が有意に減弱していた。そこで、CYP2C19遺伝子多型とVerify Now Systemで測定したADP凝集能との関連性を検討し、クロピドグレル反応良好群(Noncarrier)の測定値から、有効治療域のカットオフ値を設定した。その結果、クロピドグレル反応良好群におけるVerify Nowで測定したカットオフ値がPRU256、%inhibitionで26.5%となった。これにより、アスピリンとクロピドグレルの抗血小板剤併用療法における目標値が推定された。
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