房室弁輪部起源の心房頻拍の1つである、房室結節近傍起源の心房性頻拍の機序および詳細な頻拍の回路の位置を明らかにするために、エントレインメント法を用いて検討を行った。まず、頻拍中の最早期心房興奮部位を明らかにするため、Ensite3000マッピング装置を用いて頻拍中の右房内マッピングを行った。Virtual電位で同定した最早期興奮部位にカテーテル電位を留置しコンタクト電位を記録した。その後、頻拍中に心房内複数個所より、頻拍の心拍数より5拍/分速いレートでペーシングを行い、マニフェストエントレインメントが認められるかについて検討した。ペーシング中、最早期興奮部位での心房電位を同時に記録し、この電位がエントレインメント中にorthodromicにキャプチャーされるかどうかも観察した。17症例でこの検討を行った結果、全例でマニフェストエントレインメントが認められた。エントレインメントは、症例ごとにある特定の部位(高位右房中隔、右心耳、高位右房側壁)からのペーシングでのみ認められた。マニフェストエントレインメントは冠状静脈洞を含む低位右房からのペーシングでは認められず、回路内の伝導遅延部位はKoch三角外に存在することが示唆された。また、マニフェストエントレインメント中、最早期興奮部位での心房電位はorthodromicにキャプチャーされ、頻拍回路のexitとentranceは解剖学的に異なる部位に位置していることが示唆された。
|