房室弁輪部起源心房性頻拍のうち、房室結節近傍起源の頻拍の頻拍回路を明らかにするため、エントレインメントを用いた検討を行った。17例の房室結節近傍起源の頻拍症例で、まず頻拍中に最早期興奮部位の同定を行った。その後、最早期興奮部位での電位を記録したまま、心房内の複数個所から、ペーシングを行い、マニフェストエントレインメントが認められ、かつ最早期興奮部位の電位がOrthodromicにcaptureされるペーシング部位を同定した。リエントリー回路のSlow conduction areaへの興奮の入り口は、マニフェストエントレインメントが認められるペーシング部位方向に向かって存在すると考えられることから、Slow conduction areaの入口部を同定するため、頻拍中に、最早期興奮部位からマニフェストエントレインメントが認められるペーシング部位方向に向かって2cm離れた部位からカテーテルアブレーションを開始した。マニフェストエントレインメント全例で認められ、症例ごとに特定の部位からのペーシングにより認められた。頻拍は、最早期興奮部位から、マニフェストエントレインメントが認められるペーシング部位方向に向かって10.1±2.8mm離れた部位への通電により全例で停止し、誘発不能となった。すなわち、この部位がSlow conduction areaへの興奮の入り口と考えられることから、頻拍のリエントリー回路はEntranceからExitまでの距離が10.1±2.8mmのSmall reentry circuitと考えられた。このEntranceからExitまでの間のCaチャネル依存性組織がSlow conduction areaの素地となり頻拍回路が形成されていると考えられた。頻拍回路のEntranceと考えられる成功通電部位は、いずれもKoch三角外に存在することから、房室結節性リエントリー性頻拍とは異なる疾患単位であることが示唆された。またこの方法を用いた成功通電部位は、いずれも最早期興奮部位に比べ、His束からより離れた位置に認められることから、従来の最早期興奮部位に対する通電に比べ、房室ブロックのリスクが少ない方法であると考えられた。
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