研究課題
本研究は急性冠症候群において運動療法を含む包括的心臓リハビリテーション(包括的疾病管理)が冠動脈プラークと血管リモデリングをどのように改善するかを明らかにするものである。2009年12月から2011年1月まで急性冠症候群で冠インターベンションに成功し、血管内超音波(IVUS)が施行できた25例(男性24名女性1名、平均年齢59±6歳)を登録した。そのうち13例に6-8ヶ月後の再造影および本研究のエンドポイントであるIVUSを施行した。残り12例のうち6名が包括的疾病管理群として観察中であり、他の6名は通常治療群として再検査にむけて追跡中である。25例全体の病型は、ST上昇型心筋梗塞が16名(64%)、非上昇型が9名(36%)であり、1枝病変が18名(72%)、2枝病変が7名(28%)、梗塞部位としては、前壁中隔が11名(44%)、下壁が10名(40%)、後側壁が4名(16%)であった。再検査が終了した13名は、10名が包括的疾病管理群で3名が通常治療群であった。包括的疾病管理群は、150日間で平均回数27±6回当院での心臓リハビリテーションプログラムに参加した。10名の包括的疾病加療群の入院時と6か月後の危険因子は、LDL-Cは105.5±42.7mg/dlから67.0±13.5mg/dlへ有意に低下し、中性脂肪は114.2±66.2から117.6±70.1mg/dl、HDL-Cは46.6±15.1から46.7±19.3mg/dlと良好にコントロールされている。また、空腹時血糖は128±62.7から98.7±14.0mg/dlへ低下し、HbAlc5.8±1.4から5.5±0.4%、収縮期血圧は121.9±18.9から126.4±21.3mmHgと良好にコントロールされている。3名の通常治療群の入院時と6か月後の危険因子は、LDL-C125.3±21.0mg/dlから92.7±14.5mg/dlへ有意に低下し、中性脂肪は122.7±28.1から115.0±14.9mg/dl、HDL-Cも47.3±22.7から57.0±28.7mg/dlと良好にコントロールされている。また、空腹時血糖は142±36.4から98.3±8.1mg/dlへ低下し、HbAlc5.9±0.6から5.6±0.4%、収縮期血圧143.3±20.3から145.7±8.5mmHgなどと良好にコントロールされている。10名の包括的疾病管理群の運動耐容能(Peak VO2)は、13.6±2.6から20.3±4.9ml/kg/min、3名の通常治療群は15.0±2.0から24.1±4.4ml/kg/minと両群ともに改善が得られた。また下肢筋力に関しては、通常治療群が211.6±8.3から205.3±47.6Nm×100/kgと維持されていたのに対し、包括的疾病管理群では146.7±45.8から170.6±46.6Nm×100/kgへと改善を認めていた。なお、IVUSはコアラボでの集中最終解析の予定である。現在通常治療群が少ない事、また通常治療群ではあるが、この群も包括的疾病管理群と同様に入院中に運動指導をうけ、退院後は日常活動度も平均11005±5732歩/日、357Kcal/日と保たれていたことより、今後包括的管理のプラーク退縮への有用性、血管体積および内腔の維持への有用性を検討するには、過去の運動指導介入なしの研究とのデータ比較も必要であると考え検討していく予定である。次年度は目標症例数40例へ向けて、残り15例の登録を予定している。
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Journal of Atherosclerosis and Thrombosis
巻: 18(1) ページ: 42-48
Atherosclerosis
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巻: (in press)