研究概要 |
心不全の発症進展のメカニズムには、心筋線維化が関与していることが知られている。しかしながら、どのようなメカニズムにより心筋線維化に関連する蛋白の発現調節がなされているのかは明らかでない。最近microRNA(miRNA)が遺伝子発現を調節する重要な因子であることが明らかにされてきた。miRNAは21~24塩基からなり、mRNAと結合することにより翻訳を抑制したりmRNAそのものを分解したりする働きがあることが明らかにされてきている。私たちは、医学部倫理委員会の承認を得た後、文書による研究参加同意取得の下、昨年度拡張型心筋症8例を対象に、心筋生検標本の一部を用いてマイクロアレイによるmiRNA発現プロファイリングを行った結果、左室心筋線維化に関与すると考えられる7種類のmiRNAを同定した。本年度は、新たに14症例を対象に左室心筋生検標本の一部を用いて、定量的RT-PCR法により昨年度心筋線維化との関連が同定された7種類のmiRNAを含む12種類のmiRNAレベル(miRNA-1, miRNA-21, miRNA23a, miRNA-125a, miRNA-133b, miRNA-135b, miRNA-208, miRNA-210, miRNA-514, miRNA-548b, miRNA-562, miRNA-624)を評価した。解析の結果、心筋生検標本において心筋線維化の程度が進行している症例ではmiRNA-1,miRNA-23a,miRNA-210,miRNA-624のレベルが有意に(p<0.05)小であった。miRNA-1およびmiRNA-23は以前より心不全の進展に関与していることが報告されている。私たちは、miRNA-210およびmiRNA-624が心筋線維化の進展に関与している可能性を、今回の検討で初めて発見した。
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