研究概要 |
拡張型心筋症(DCM)は原因が不明で、薬物治療が進歩した現在でも心不全の増悪による入院を繰り返す予後不良な疾患である。DCMの心筋病理では心筋線維化が特徴的で、心筋線維化を予防、改善することがDCMの予後改善につながると考えられている。しかしながら未だ有効な治療法が存在しない。私たちは昨年度までにDCM症例の心筋生検標本におけるマイクロRNA(miRNA)の発現を評価した結果、心筋線維化が進行している症例では、miRNA-1,miRNA-23a,miRNA-210,miRNA-624の発現低下を認めた。本年度はさらに9症例で検討した結果、同様にmiRNA-1,miRNA-23a,miRNA-210,miRNA-624の発現低下を認めた。さらに心筋線維化が進行し上記4種類のmiRNA発現低下を認める症例では、心筋線維化が進行していない症例と比較して、血中NT-ProBNP濃度が有意に(p<0.05)低下していた(2413±1574vs.472±153pg/mL)。また、心筋線維化が進行している症例では心筋線維化が進行していない症例と比較して、血中アルドステロン濃度が低下する傾向(p=0.052)にあった(109±65vs.42±41pg/mL)。しかしながら、その他の血中バイオマーカー(高感度CRP,MMP-3、ICTP,IL-6等)には差を認めなかった。以上の結果から、DCMにおける心筋線維化進展の過程には複数のmiRNAの発現異常が関与している可能性が示唆された。
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