心不全治療において、β-ブロッカーが予後の改善に寄与することが明らかとなり、神経体液性因子のみならず、自律神経に対する介入の効用が明らかとなった。しかしながら従来、心臓自律神経が実際にどのように活動し、不整脈発生などに関与しているかは不明であった。研究代表者らは自由活動犬において、正常時と心不全時の交感神経、左迷走神経と体表面心電図の長時間直接同時記録に成功し自律神経活動と心拍の関係と特徴を明らかにした。交感神経活動は有意な日内変動をもち、発作性心房頻拍の86%は交感神経・副交感神経の同時発火により、心室期外収縮の78%は交感神経発火により発生し、洞停止の56%は交感神経発火による頻脈とそれが急停止した直後に発生することが明らかとなった。つまり心不全に合併する徐脈性・頻脈性不整脈のほとんどは交感神経の発火が関与して発生していることが明らかとなった。これらの結果からこの心不全モデルに対して、中枢からの交感神経端末としての中心をなす両側胸部星状神経節をアブレーション(胸腔交感神経遮断術)したところ、心不全のみ群に比し洞停止は有意に減少し、発作性心房頻拍は消失するなど極めて有効であることが明らかとなった。また心不全のみ群には見られなかったが、両側胸部星状神経節アブレーション群にのみ、迷走神経が孤立性に活動亢進することなどの特徴が観察された。今後、心不全の機能的予後の改善にも有効であることが期待できる。
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