心不全において自律神経、ことに交感神経に対する介入が、症状や生命予後を改善すること、交感神経β受容体遮断薬の有用性が確立している。我々はペーシング誘発性心不全犬を用いて、自由運動下の交感神経、迷走神経、体表面心電図直接同時記録を施行し、心不全における様々な徐脈性また頻脈性不整脈の発生に交感神経活動亢進が関与していることを明らかにした。さらに我々は、体表面心電図における心室再分極相を表すQT間隔が、正常時とは異なり、心不全時には交感神経活動亢進とともに延長することを報告した。つまり、心不全における交感神経活動亢進が、不整脈の発生、維持のみならず、心室においてdown regulationしたカリウムチャネルにより延長し、空間的にばらついた再分極相を持つ不整脈基質(素地)をさらに悪化させることを明らかにした。また、心臓における中枢からの交感神経活動亢進の主たる経路である星状神経節をクライオアブレーションし、心不全合併不整脈を改善させる治療法であることが明らかにした。これらのことから胸腔内の胸椎(Th2-4)星状神経節アブレーションが、心不全患者において、少なくとも不整脈を介した生命予後の改善に寄与できることが明らかで、心臓に対する交感神経活動亢進をほぼ心臓だけの単臓器のみ遮断するため、ほとんど合併症なく、合併不整脈、心機能、生命予後の改善に寄与することが期待できる。
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