研究課題
本研究では、自律神経活動および機械的負荷の変化が不全心の電気生理学的特性におよぼす時空間的影響を光学的心筋活動電位マッピング法により検討し、シミュレーションによる理論的解析を加えることによって、慢性心不全患者における致死性不整脈の易発生基盤を解明することを目的としている。本年度は、(1)迷走神経刺激治療が不全心の電気生理学特性の空間分布に及ぼす影響の検討および(2)自律神経活動および機械的負荷が不全心における不整脈発生にはたす役割についての数理的検討を行なった。(1)ラットを用いて左冠動脈前下行枝の結紮により心筋梗塞による心不全モデルを作成した。迷走神経刺激治療群(VS群)と対照群(C群)に割り振り6週間の治療を行った後、血行動態検査と非梗塞部表面電位の光学的活動電位マッピングを行った。迷走神経刺激治療によって、心室重量の減少、心拍出量の増加、左室拡張末期圧の減少を認めた。迷走神経刺激治療によって、活動電位持続時間(APD)は短縮して拡張期(DI)に対するrestitution曲線は平坦となった。また、興奮伝導速度の低下も小さくなり、伝導速度restitution曲線も平坦となった。APDの空間的不均一性には、明らかな変化を認めなかった。迷走神経刺激治療は、心不全心において、心筋の再分極特性および興奮伝播特性の改善によって不整脈の発生を抑制すると考えられた。迷走神経刺激治療が非梗塞部位の電位的特性の不均一性に及ぼす影響は少なかった。(2)健常心筋の心不全心筋の電気生理学的モデルにstretch activated channelsを組み込んだ独自のモデルを作成し、GPUを用いたシミュレータで動作するようにした。拡大した心不全心では健常心臓と比べてより心筋は伸展されやすく、機械的刺激によって期外収縮が誘発されやすく、心室細動波の分裂が起きやすいと予想された。自律神経活動による心筋の電気生理学的特性の修飾についいては定量的にモデルに組み込むことが困難であった。
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