研究概要 |
我々は、進行性心臓伝導障害(PCCD)本邦1家系に、コネキシン(C×40)の遺伝子変異(Q58L)をはじめて同定したことをもとに、共同研究者・研究協力者とともにPCCD患者を集積し、139名の発端者の遺伝子解析を行った。C×40変異1例以外に、心筋Naチャネル遺伝子(SCN5A)の変異を12症例に認めたが、その他のギャップジャンクション(GJ)の変異は同定しなかった。内因性GJを欠損するN2A細胞に正常(WT)またはQ58LのC×40 cDNAを発現させ、C×40の機能解析をした。ダブルパッチクランプ法でもとめたwhole-cellコンダクタンスは、WT=12.9±2.9 nS(n=4),Q58L=1.2±0.3 nS(n=5)で、変異C×40のコンダクタンスが有意に低下していた(p<0.01)。また、単一チャネルコンダクタンスは、WTでは55pS,125pSの2つのピークが見られたが、Q58Lは40pSの単一ピークしか存在せず、コンダクタンス低下が単一チャネルレベルでおきていることが判明した。次に、C×40とGFPの融合タンパクを作成し共焦点顕微鏡で細胞内局在を確認したところ、WT-C×40は細胞膜上の一部に集族しGJを形成していたが、Q58Lは細胞膜にびまん性に発現していた。これは、変異C×40自体はトラフィッキングに異常なく膜に移行するものの、変異が細胞外ドメインに存在するため、細胞間でコネクソン同士(コネキシンの6量体)がカップリングしてGJを形成するプロセスに障害が生じていると推測された。以上の結果から、C×40は心臓では刺激伝導系と心房に発現するため、Q58L変異は刺激伝導系に特異的な障害をきたすと考えられた。今後、トランスジェニックマウスやゼブラフィッシュ等を用いて、個体レベルでC×40変異の機能解析をおこなう。
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