HOP(Homeodomain-Only Protein)は小分子心筋転写制御因子であるが、その作用機序の詳細は不明である。研究者は拡張型心筋症早発家系においてHOP遺伝子変異を発見、さらにそのヒト変異を導入した変異型HOP過剰発現マウスを作製し拡張型心筋症・重症心不全の発症を確認した。これをふまえ、本研究ではHOPの生理作用、HOP変異が心不全を惹起する機序を解明する。HOPに会合する分子Xを発見同定、HOPの動態と作用機序を解明、さらに一連の心筋細胞転写制御メカニズムを知り、HOPを軸にした新しい心不全治療への糸口をつかむ。 平成22年度には、酵母two-hybrid法によるHOP会合分子同定実験を継続し、10-15種類の物質をHOPタンパクと会合する候補分子として同定した。なかでも心臓の発生や収縮弛緩、カルシウム代謝、シグナル伝達に関与する物質を対象に、免疫沈降-ウェスタンブロッティング法を用いてHOPとの直接結合確認をおこなった。うち一種類の物質に関しては免疫沈降法での直接結合が確認された。しかしながら、この物質は正常型HOPタンパクにも変異型HOPタンパクにも同程度に結合することが確認された。HOPと結合する新規物質同定という観点からは有意義であるが、本研究では変異HOPが心機能障害をきたす機序の解明を主たる目的にしており、その後、その物質の有する生物学的活性の観点からの検討と、HOPと結合する他物質の同定という観点からの検討に着手した。
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