研究概要 |
平成23年度は下記項目に対して研究を行い一定の成果を得た。得られた成果をまとめ下記に示す学会発表(米国Annual Biophysical Meeting、日本循環器学会総会、国際心臓研究学会日本部会)を行った。また本研究の成果について現在英文科学雑誌に投稿中である。 1.心不全時の心筋インスリン抵抗性を再現するex vivo実験モデルに対するインスリン抵抗性改善薬の効果: 平成22年度までに我々は当該研究において心不全時の心筋インスリン抵抗性を再現するex vivo実験モデルを確立した。この実験モデルを用いてインスリン抵抗性を改善させる可能性のある薬剤(PPAR-γ agonist, ROS scavenger, CPT-1 inhibitorなど)の効果を検討した。また薬剤を負荷した時のトランスポーター(GLUT4,FAT/CD36)の細胞内分布も観察し、それぞれのトランスポーターの役割について検討した。 2.ミトコンドリア障害に関する検討: ミトコンドリアは心筋細胞のエネルギー代謝に対して大きな影響を与えるため、上記インスリン抵抗性心筋細胞のミトコンドリア機能について検討を行った。また、インスリン抵抗性に対する改善効果が期待される薬剤を負荷した時のミトコンドリア機能についても検討を行った。上記薬剤のなかで唯一インスリン抵抗性を改善させたのは、ミトコンドリアへ脂質取り込みを阻害するCPT-1 linhibitor (perhexiline)であり、ミトコンドリア膜電位を回復させ、ミトコンドリア活性酸素(ROS)濃度を低下させ、細胞内ATP濃度も改善させ、ミトコンドリアの保護効果を有することが示された。以上からインスリン抵抗性の改善にはミトコンドリア保護が肝要である可能性が示唆された。
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