研究課題
(1)心臓エネルギー代謝における長寿遺伝子SIRT1の役割の検討:心不全の発症と進展に伴い心臓エネルギー代謝は大きく変化する。SIRT1はNAD+依存性脱アセチル化酵素であり細胞のエネルギー代謝調節に大切である。また、SIRT1は線虫などのモデル動物において、寿命の調節に大切であると報告されている。SIRT1の心臓エネルギー代謝における役割を検討するためSIRT1を心臓特異的に過剰発現させた遺伝子改変マウス(低発現:3.2倍、中発現:6.8倍、高発現:20倍)を作製し心機能、エネルギー予備能、基質の取り込み、ミトコンドリア機能を検討した。SIRT1低発現マウスでは収縮能、拡張能とも正常であった。SIRT1中発現マウスでは収縮能は保たれていたが拡張能が低下していた。SIRT1高発現マウスは心不全を呈し約3ヶ月で死亡した。SIRT1の用量依存的に心臓の脂肪酸の取り込みが減少し、変性ミトコンドリア数が増加し、酸化ストレス指標が減少した。ミトコンドリア形態と酸化ストレス指標の変化はミトコンドリア機能関連遺伝子のSIRT1用量依存性発現低下を伴った。ミトコンドリアの呼吸能と活性酸素種産生はSIRT1マウスで低下していた。さらにSIRT1低発現マウスに圧負荷をかけると心機能の低下を認めた。以上、マウス心臓においてSIRT1を恒常的に過剰発現するとミトコンドリア障害と心機能障害を引き起こすことが分かった。(2)恒常的なPI3キナーゼ(PI3K)活性亢進が心臓に与える影響についての検討:PI3キナーゼ(PI3K)はインスリン/インスリン様増殖因子-1経路の重要な構成分子である。まず、心臓特異的にPI3Kを恒常的に活性化させた遺伝子改変マウスを用いて、マイクロアレイ解析により恒常的PI3K活性化が心臓の遺伝子発現に与える影響を包括的に解析した。包括的遺伝子発現解析の結果、複数の熱ショック蛋白の遺伝子発現が増加しているころが分かった。a forkhead box O(FOXO)はインスリン/インスリン様増殖因子-1シグナル経路の下流にある転写因子で熱ショック蛋白の発現を調節する。恒常的なPI3K活性化によりFOXO1の蛋白量は増加し心筋細胞の核に局在した。次に20カ月齢の老齢マウスを用いて、恒常的PI3K活性化が細胞老化マーカーの発現に与える影響を検討した。老齢の野生型マウスと老齢の恒常的PI3K活性化マウスの間に、加齢関連βガラクトシダーゼ活性、細胞周期抑制分子発現、炎症関連分子発現、リポフスチン量などの細胞老化マーカーに差を認めなかった。
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Life Sci
DOI:10.1016/j.lfs.2012.02.010
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DOI:10.1016/j.ijcard.2011.07.056
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巻: 51 ページ: 1026-1036
10.1016/j.yjmcc.2011.09.013
http://kyoto-u-cardio.jp/kisokenkyu/sinfuzen/