アポトーシス性心筋細胞死が心不全発症進展に影響を及ぼしているが、これまでにネクローシス性心筋細胞死が心不全発症進展に影響を及ぼしていることを明確に証明した研究は殆ど無い。そこで、本研究では、アポトーシス性刺激とネクローシスとのシグナルクロストークが存在するとの仮説に基づき、ネクローシス性心筋細胞死の細胞内情報伝達機構の解明と心不全進展への関与を明らかにすることを目的とする。 ネクローシス性細胞死は、シクロフィリンD(CypD)依存性ミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)を介していることが明らかになっている。そこで、CypDノックアウトマウスを用いて圧負荷による心不全モデルを作製し、CypD依存性非アポトーシス性心筋細胞死の心不全発症への関与について検討した。圧負荷1ヶ月後の時点において、野生型マウスに比して、CypDノックアウトマウスでは、心機能が保たれていた。CypDノックアウトマウスではネクローシス性心筋細胞心減少により、心不全発症が抑制されたと考えられる。野生型、CypDノックアウト、Apoptosis Signal-regulating Kinase1(ASK1)ノックアウト成獣マウスから心筋細胞を単離培養し、過酸化水素負荷によるMPT誘導を検討した。野生型マウス心筋細胞ではMPT誘導を認めるものの、CypDノックアウトマウス心筋細胞、ASK1ノックアウトマウス心筋細胞では、MPT誘導を認めなかった。 また、IKKβ/NF-κB経路は圧負荷に対して心筋細胞保護に関わること、MTK1の活性化はアポトーシス、心不全を誘導することを明らかにした。
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