ネクローシス性細胞死は、シクロフィリンD(CypD)依存性ミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)を介していることが明らかになっている。本研究では、アポトーシス性刺激とネクローシスとのシグナルクロストークが存在するとの仮説に基づき、ネクローシス性心筋細胞死の細胞内情報伝達機構の解明と心不全進展への関与を明らかにすることを目的とする。 免疫沈降法にてCypDとApoptosis Signal-regulating Kinasel (ASK1)との分子間結合を認め、その結合は過酸化水素負荷依存性に結合が増強されることがわかった。また、CypDとASK1ドミナントネガティブ体(AsK1DN)との間では、分子間結合を認めなかったことから、活性型AsK1がCypDと結合すると考えられた。 過酸化水素負荷にて野生型成獣マウス単離培養心筋細胞ではMPT誘導を認めるものの、CypDノックアウト(KO)マウス心筋細胞、ASK1 KOマウス心筋細胞では、MPT誘導を認めなかった。しかしながら、CypD Koマウス心筋細胞にアデノウイルスにて恒常活性体AsK1(AsK1△N)を過剰発現させるとMPTが誘導されたことから、cypD依存性MPT誘導機構にAsK1が関与する可能性が示唆された。In vivoでは、圧負荷にてCypD KOマウスでは野生型に比して心不全が抑制される。薬剤誘導性にAsK1△Nを心筋特異的に過剰発現させると約2週間で心不全に陥るが、CypD Koにて薬剤誘導性にASK1△Nを心筋特異的に過剰発現させるとその心不全発症が抑制された。さらに、新規CypD結合タンパク質の検索を試み、検討を続けている。 また、心筋特異的カルパイン4 KOマウスを用いて、カルパインは心筋保護的に働き、膜の修復に重要な役割を果たすことを明らかにした。
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