研究課題
心臓機能維持で重要とされるneuregulin-1/ErbBシグナルが心筋細胞からのangiopoietin-1(Ang1)分泌を介して心臓の恒常性維持に貢献する可能性を我々は以前に報告した(J.Clin.Invest.Nakaoka et al.2007)。心筋から分泌されるAng1の役割を解明するため、Ang1^<flox/flox>マウスを作成してα-MHC-Creトランスジェニックマウスとを交配して、心筋特異的Ang1欠損(Ang1^<flox/flox>;α-MHC-Cre:AnglCKO)マウスを作成した。このマウスはE12.5-E14.5で胎生致死で、(1)心内膜と心筋肉柱層の接着不全、(2)心筋肉柱と緻密帯の発達不全、(3)冠血管形成の異常などの表現型を呈した。冠血管内皮の起源については長らく不明だったが、2010年スタンフォード大学のグループがNatureにその起源は静脈洞の静脈内皮にあり、静脈内皮が心筋進入に際して一旦静脈の性質を喪失して脱分化した後、再度動脈・静脈内皮に分化すると報告した。Ang1CKOマウスの心臓をCD31免疫染色で解析した結果、心室壁の心外膜直下と一層内側に形成される冠静脈と冠動脈の2層の血管構造のうち、外側の冠静脈の形成が特異的に欠損することを我々は見出した。静脈内皮でlacZ遺伝子を発現するEphB4-lacZ-ノックイン(KI)マウスとAng1CKOマウスの交配で得られたAng1CKO;EphB4-lacZ-KIマウスではlacZ陽性の心外膜直下の冠静脈が欠損することから、Ang1CKOで欠損するのが静脈であることは確認された。インク注入による冠動脈造影実験ではAng1CKOマウスとコントロールマウスともに冠動脈が同等に描出され、冠動脈の形成に異常は見られなかった。Ang1CKOマウスの心臓からRNAを抽出して野生型マウスと比較すると静脈マーカーEphB4,COUP-TFIIの発現量はAng1CKOで有意に低下していた。以上より、Ang1は冠静脈形成に必須の役割を担うことが明らかとなった。
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日本臨床
巻: 69(Suppl 7) ページ: 20-24
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/cardiology/27research/2784res.html