野生型(WT)マウス、SMP30遺伝子ノックアウト(SMP30-KO)マウスを用いて、マウス皮下にインフュージョンポンプを植込み、アンジオテンシンII(800ng/kg/min)を2週間持続投与した。2週後、マウスをサクリファイスし、心筋でのBax、BCLの発現レベルをウェスタンブロットで検討した。SMP30-KOマウスではWTマウスに比し、アンジオテンシンII投与後、Bax/BCL比の有意な上昇を認めた。心筋でのカスパーゼ3活性を測定したところ、SMP30-KOマウスでWTマウスより高値であった。心筋細胞のTUNEL染色を行ったところ、SMP30-KOマウスではWTマウスより陽性細胞数が有意に増加していた。昨年までと本年度の研究結果から、SMP30-KOマウスではアンジオテンシンIIによりNADPHオキシダーゼ活性の上昇、ROS産生の増加、c-Jun-N terminal kinaseのリン酸化活性の上昇、Bax/BCL比の増大、カスパーゼ活性の上昇によりアポトーシスが誘導されたと考えられた。SMP30は抗酸化作用、抗アポトーシス作用を介して心筋細胞保護作用を有することが示唆された。 次いで、心臓特異的SMP30発現トランスジェニック(SMP30-TG)マウスにアンジオテンシンIIを持続投与し、SMP30-KOマウスで認められた左室内腔の拡大、左室壁運動の低下、p21遺伝子の発現、NADPHオキシダーゼ活性、ROS産生について評価し、SMP30遺伝子の心臓選択的な過剰発現によって抑制されるのかを検討した。SMP30-TGマウスではアンジオテンシンIIによる左室内腔の拡大、左室壁運動の低下、p21遺伝子の発現、NADPHオキシダーゼ活性、ROS産生が抑制された。
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