研究課題
本研究は、新たなサイクリックAMPの標的分子であるEpac (Exchange Protein Activated by Cyclic AMP)の慢性心不全に及ぼす役割を検討することを目的とし、実験を行った。【方法】デオキシコルチコイド(DOCA)の錠剤(50mg)を頸部皮下に埋め込み、同時に1%NaClを飲水させることでアルドステロン+ナトリウム負荷を行った。マウスは野生型、Epac1欠損、Epac2欠損マウスを使用した。手術前、1週間、2週間、3週間、4週間後にそれぞれ心エコーを行い、手術4週後に心臓カテーテル検査、組織学的検討を行った。【結果】1. DOCA+NaCl負荷を野生型マウスと、Epac1欠損マウスに行ったところ、Epac1欠損マウスでは野生型マウスに比べて著明な心拡大を呈した。2. DOCA負荷により、Epac1欠損マウスの心臓組織でアポトーシスが著明に亢進していた。3. DOCA+NaCl負荷で、Epac1欠損マウスでは野生型マウスに比べて著明な左心室駆出率の低下を認めた。4.負荷によりEpac1欠損マウスでは心エコーにてE波のA波に対する割合が高くなった。5.負荷後4週間では、Epac1欠損マウスでのみ、心室の収縮性の指標であるMax dP/dtの低下、拡張能の低下の指標であるMin dP/dが増加した。6.負荷後4週間のカテーテル検査でEpac1欠損マウスで血圧の低下と心拍の低下が認められた。Epac2欠損マウスは各項目において野生型と差が認められなかった。【結論】アルドステロン負荷によりEpac1欠損マウスのみ心臓収縮、拡張障害をきたすことが明らかになり、その原因はアポトーシスの亢進にあることが示唆された。DOCA投与によるアルドステロン負荷でEpac1欠損マウスが著明な心不全を呈することを明らかにした。
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