研究課題
心臓への感染や圧負荷等により心筋の脱落や心機能の低下がおこり、代償性に線維芽細胞が増殖し細胞外基質を産生すると、心臓は硬直化して心機能が低下し慢性心不全へと進行する。慢性心不全の治療の開発として、本研究では新たなサイクリックAMPの標的分子であるEpacに着目し、慢性心不全治療のターゲットになりうるかを検討した。慢性心不全ではアルドステロン分泌亢進状態にあることが知られているため、デオキシコルチコイド+ナトリウム負荷で慢性心不全モデルを用いた。1.デオキシコルチコイド負荷により、Epac1欠損マウスでは野生型マウスに比べて著明な心拡大を呈した。2.デオキシコルチコイド負荷により、Epac1欠損マウスの心臓組織でアポトーシスが著明に亢進していた。3.デオキシコルチコイド負荷により、Epac1欠損マウスでは有意な左心室駆出率の低下を認めた。また、Epac1欠損マウスでのみ、Max dP/dtの低下、Min dP/dtの増加がみられた。4.電子顕微鏡による解析ではEpac1欠損マウスでは、ミトコンドリアの膨張、構造異常が認められたが、線維化の亢進はなかった。5.Epac1欠損マウスの心臓組織を用いた発現解析ではSTAT3蛋白のリン酸化が亢進した。負荷後のEpac1欠損マウスの血清のサイトカイン(IL-1beta,IL6,IL10,IL17,KC,RANTES,TNFalpha)は変化がなかった。本研究の結果よりデオキシコルチコイド負荷では、Epac1欠損マウスでのみ心臓収縮、拡張障害をきたすことが明らかになり、その原因はアポトーシスの亢進にあることが示唆された。つまりEpac1は心不全などアルドステロン系が亢進した状態で、心臓保護的に働いていることが示唆された。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (20件) 備考 (1件)
Circ J
Pediatr Res
巻: (in press)
PLoS ONE
DOI:10.1371/journal.pone.0036724
J Physiol Sci
巻: 62(3) ページ: 251-257
DOI:10.1007/s12576-012-0204-0
Br. J. Pharmacol
巻: 166(2) ページ: 447-456
DOI:10.1111/j.1476-5381.2012.01847.x
J. Biol. Chem
巻: 286(22) ページ: 16982-19692
DOI:10.1074/jbc.M111.239046
Curr Drug Metab
巻: 12(6) ページ: 526-532
http://www.benthamdirect.org/pages/content.php?CDM/2011/00000012/00000006/0002F.SGM
http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~seiri1/index.html