研究概要 |
アディポネクチンは脂肪細胞から分泌され、抗動脈硬化作用、抗炎症作用を持つサイトカインである。我々は、このアディポネクチンが、心筋傷害時に心筋内に多量に発現し、かつ発現の誘導と共に心筋肥大抑制や線維化抑制作用を示す結果を見い出した。また、肥満において食事制限が心筋内アディポネクチン発現を誘導し、心筋障害が改善した(Kanda T, Int J Cardiol, 2007)。そして、本研究で肥満における食餌制限で、心筋内BDNF発現が亢進し、日常生活活動も亢進することで、肥満が軽減している(論文投稿中)。 今回の研究目的は以下の3つであった。(1)心筋傷害の原因によるアディポネクチン発現誘導に違いはあるのか。(2)アディポネクチンが心不全、心筋再生に関与するメカニズムを解明する。心筋での発現誘導ができれば、心不全改善に効果がある(3)中枢のBDNFがどういうメカニズムでアディポネクチン発現誘導するか。そして、今回の研究で以下のように結論した。(1)メタボリック症候群では著明に心筋内アディポネクチン発現の低下があり、治療で亢進した。(2)アディポネクチンが心不全に関与し、心筋での発現誘導が食餌制限治療で可能となる。(3)中枢のBDNFは、今後の課題であるが、心筋内BDNFは食餌制限で誘導されることが肥満マウスの実験で判明している。 今後は、心不全と心筋内BDNF発現、脳の神経細胞再生と心不全との関連を追及したい。
|