研究概要 |
本年度も培養心筋細胞を用いたin vitro実験として、昨年度オートファジー・ミトファジー誘導を示唆していた神経体液性因子であるアンジオテンシンII(AII)、及び分子標的抗腫瘍薬であるイマチニブを用いた研究を進めた。AIIは心筋細胞においてNADPH oxidase依存性に、ミトコンドリア由来活性酸素種を誘導していた。またMitoSOX red陽性の活性酸素種産生ミトコンドリアはオートファゴゾームを示すLC3のみでなく、リソソーム染色であるLyso Tracker greenともcolocalizeが多数確認され、ミトファジーの特徴とされるParkinの発現も認められた。AIIによるミトファジーは、ミトコンドリアROS消去薬により有意に抑制された。ミトファジーを阻害する目的でAtg6 knock down試みたが十分にミトファジーを抑制し得ず、オートファジー抑制薬として知られる3Methyl adenine(3MA)を阻害薬として用いた。細胞死をpropidium iodide染色後FACS解析及び、細胞上清のLDH遊離で検討したところ、AII(100nM,24hr)は細胞死を誘導せず、3MA投与による細胞死の顕在化も認めなかった。一方イマチニブも同様にミトコンドリア由来ROSを増強し、JC1によるミトコンドリア膜電位低下も誘導したが、障害ミトコンドリアとlisosomeのcolocalizeはごく一部で、ミトコンドリアROS消去薬によるオートファジー軽減も認めず、この系ではオートファジーが主体と考えられた。昨年このオートファジーは組織保護的であることを報告している。さらに、in vivoにおける検討として、心筋梗塞モデルにおいてp53,TigarがROS依存性のミトファジーを抑制し、心筋障害を増長していることを見出した。また同じ心筋梗塞モデルでEPAの投与は、ミトコンドリア障害緩和の結果としてミトファジー減弱に関わるfusion因子を促進し、呼吸機能を維持、心筋組織内ATP含量の保持作用を示し、心機能の改善につながことを見出した。
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