研究課題
増加しつつある虚血性心疾患、高血圧性心疾患の最終像である心不全のより根本的治療を確立するためには、心筋細胞情報伝達の最終到達点である核内の共通経路を標的とした治療法を確立する必要がある。我々は内因性ヒストンアセチル化酵素(HAT)活性を有するp300とGATA転写因子群の協力(p300/GATA経路)が心不全発症における遺伝子発現調節に極めて重要であることを示した。次に、p300/GATA経路の活性制御機構解明の為に、その結合蛋白を網羅的に解析し73個同定した。本研究では、新規結合蛋白中の1つであるSWI/SNF複合体の構成因子Ini1によるp300/GATA経路活性化機構の詳細な解明を行った。GST pull-downアッセイにより、Ini1はGATA4だけでなく、p300とも直接結合した。さらに、GATA4のC側のZinc Finger DomainとIni1のRepeat I domainが、p300のCH3ドメインとIni1のRepeat II domainが結合することを見出した。次に、HEK293細胞に、心筋細胞肥大遺伝子であるANFのプロモーターコンストラクト、GATA4、 p300およびIni1をトランスフェクションにて過剰発現させ、ChIPアッセイを行ったところ、p300過剰発現によるGATA4のANFプロモーターへの結合増加はIin1によって抑制された。さらに、HEK293細胞にGATA4、 p300およびIni1をトランスフェクションし、ANFのプロモーター活性を測定したところ、GATA4、 p300による転写活性の亢進をIni1は容量依存的に抑制した。Ini1の過剰発現により、p300/GATA4経路を介した心筋細胞肥大反応が抑制された。さらなる詳細なメカニズムを解明することにより、新規心不全治療薬のターゲットなる可能性が示唆された。
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