スプライシング機構は遺伝子発現制御機構のひとつであり、スプライシング機構が病態に関わることが知られていた。しかし、スプライシングを網羅的に解析する手法が今まで存在しておらず、心不全の病態におけるスプライシングの関与をマクロで検討した研究は少ない。本研究において、網羅的エクソン発現レベル解析を行うことにより、心不全とスプライシングの関係を明らかにすることを目的に行われた。本年度は、心不全の病態の中で、大動脈縮窄による圧負荷心不全モデルマウスを用いて検討を行った。大動脈縮窄は8週間継続して行い、心重量・肺重量の測定、心臓超音波検査、ミラーカテーテルによる心機能評価を行い、心不全の重症度を評価した。大動脈縮窄8週間後、摘出した心臓よりRNA抽出を行い、Mouse Exon 1.0ST Arrayによる解析を行った。対照群3例と大動脈縮窄群3例による比較検討を行った。得られたエクソンアレイデータを、エクソンアレイ解析ソフト(GeneSpringGX)を用いてマウス不全心筋におけるエクソン発現プロファイルの作成を行った。222710プローブ(17704遺伝子)からバックグラウンド補正などを行い、エクソンレベルの発現が2倍以上変化した593プローブ(253遺伝子)を同定した。これは、遺伝子レベル全体が変化した253遺伝子とほぼ同数であった。この結果は、心不全という病態において、スプライシングパターンが変化した遺伝子は、遺伝子レベル全体が変化した遺伝子と同等の関与があることが示唆される結果であった。また、遺伝子発現レベル全体だけで変化している遺伝子数113遺伝子で、スプライシングパターンが変化している遺伝子112遺伝子と心不全の病態において、それぞれ異なった役割を演じている可能性も示唆された。
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