研究課題
基盤研究(C)
加齢とともに進む心血管組織における石灰化の中で、特に血管石灰化は高齢者の不安定な血行動態を惹起しており、心血管イベント発症に大きく関与する。また、近縁の研究により、細胞老化は加齢に伴う血管老化と血管機能障害に関与しており、特に動脈硬化病変には血管構成細胞の細胞老化形質が背景にあることが言われている。それを踏まえた上で血管石灰化の分子機序から見てみると、血管平滑筋細胞の骨芽細胞様形質転換を伴った老化形質もその一端を担っている可能性がある。本研究により、我々は血管平滑筋細胞石灰化の初期形成過程において長寿遺伝子Sirtuinがダイナミックに抗老化作用を示し、最終的に血管石灰化の抑制に関わっている可能性を見出した。具体的には、高リン状態による石灰化誘導に対して、Sir2のヒトホモログであるSIRT1が抑制され、その結果としてのp21活性化の関与が大きいことが判明した。逆に、SIRT1を活性化もしくは過剰発現することにより、血管平滑筋細胞の老化形質も抑制され、結果的に石灰沈着も減少した。また、このSIRT1-p21経路は骨形成過程における重要な転写因子Runx2の発現にまで調節していることが同定された。ラット腎不全モデルにおいても、メンケベルグ型血管中膜石灰化を惹起することにより、石灰沈着が出現する前から老化形質を伴った細胞が中膜に出現していることが確認された。これらの新たな知見は、血管石灰化に対する今後の治療戦略の一つとしてSirtuinがターゲットになり得る可能性を示唆するものであり、それに基づく新たな治療法の開発が期待される。
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