ストア依存性カルシウム流入(Store-Operated Calcium Entry:SOCE)は様々な細胞で生理的に重要なシグナル伝達に関与する。近年、StimがSOCE制御に必須のタンパクとして同定され、種々の細胞におけるその役割が解明されつつある。我々は、培養血管内皮細胞にStim1が発現しており細胞内Ca2+枯渇に応じて惹起されるSOCEに伴いその細胞内分布がダイナミックに変化すること、その発現量がSOCEの大きさに関わること、さらにeNOS活性化・NO産生を介して血管内皮機能を制御することを確認、報告した。また、生体内におけるStim1の血管内皮制御を解明するため、血管内皮特異的Stim1ノックアウトマウス(cKO)を作出し、血管内皮機能および血圧への影響を解析した。 マウスから単利培養した血管内皮細胞におけるStim1の発現を定量的RT-PCR法およびウェスタンブロッティング法によって著しい発現の低下が確認された。また、SOCE刺激に対するCa^<2+>流入およびeNOSの活性化抑制が認められた。10週令のcKOマウス由来大動脈ではフェニレフリンによる収縮が有意に増強し、アセチルコリンによる内皮依存性血管弛緩反応は低下していた。さらに、10週令のcKOマウスにおいて明期収縮期血圧の有意な上昇を認めた。 以上の検討によりStim1はeNOS/NO系を介して血管内皮機能を制御し、血圧調節に関与している事が個体レベルで証明された。
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