研究概要 |
アンジオテンシンII負荷による高血圧において,酸化ストレス消去系酵素extracellular superoxide dismutase(ecSOD), peroxisome proliferator-activated receptor(PPAR)γと先天免疫に関与するTLR4の関係に特に着目し,臓器障害の新たな進展調節機序を解明する目的で,12-16週Wild-type BALB/c(対照群)とTLR4機能が欠損しているC. C3H-Tlr4_<lps-d>マウス(Jackson Laboratory)を用いて以下の実験を行った. すなわち,Wild-typeとTlr4_<lPs-d>マウスともに薬剤負荷前の血圧と脈拍に差異はなかった.Osmotic mini-pumpを用いてアンジオテンシンII,ノルエピネフリン負荷あるいはアンジオテンシンIIに加えてPPARγの選択的拮抗薬GW9662を追加投与した群を作成したが,全ての投与群において同等に血圧が上昇し,脈拍には差がなかった.Wild-typeマウスでは,Ang II負荷においてノルエピネフリン負荷と比べて大動脈血管壁のecSODの発現が抑制され,酸化ストレスが増加し,血管再構築と線維化が進行したが,TLR4_<lPs-d>マウスではこれらAng IIの効果がなかった.一方,アンジオテンシンIIに対してGW9662を追加投与した群において,大動脈血管壁におけるGW9662の追加投与によるecSODやPPARγの発現に対する影響は認めなかった.このことから,アンジオテンシンII負荷においてecSODはTLR4_<lPs-d>により発現が抑制されるが,その機序にはわれわれがこれまで明らかにしてきたCu/ZnSODに対するPPARγ系を介する制御系は関与していないことが示唆された. 以上より,TLR4は酸化ストレスを従来とは異なる機序で制御していることが示唆された.
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