研究概要 |
本研究ではミネラルコルチコイド受容体を介したグルココルチコイドによる血管内皮障害機構の解明を目的とした。今年度はヒト臍帯静脈内皮細胞培養系に内因性グルココルチコイド(GC)であるハイドロコルチゾン(HC)および合成GCであるメチルプレドニゾロン(mPSL)を10^<-7>, 10^<-6>, 10^<-5>Mの最終濃度で添加し,活性酸素産生およびさらにミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬であるspironolactoneあるいはGC受容体拮抗薬(GR)であるRU486を10^<-7>, 10^<-6>, 10^<-5>Mの最終濃度で添加して,MRおよびGR阻害の影響を評価した.GC応答配列によるluciferase reporter gene assayではHCおよびmPSLは濃度依存性にGC応答配列の転写活性を有意に亢進させ,その作用はspironolactoneならびにRU486によって濃度依存性に抑制された.また,HCおよびmPSLはdihydroethidium染色による評価においてsuperoxide産生を増加させるとともに、ウエスタンブロッティングではレドックス制御を受けるVCAM-1の発現を増加し、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現とそのSer1177リン酸化・活性化を抑制していた。さらにこれらの作用はいずれもspironolactoneとRU486により濃度依存性に抑制された. これらの結果はGC過剰はGRのみならずMRを介して血管内皮細胞へのNO bioavailability低下作用を発揮していることを示すものであり,MR作用の阻害はGC誘発性血管内皮細胞障害の治療標的となる可能性がある.
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