本研究ではミネラルコルチコイド受容体(MR)を介したグルココルチコイド(GC)による血管内皮障害機構の解明を目的とした。今年度はヒト臍帯静脈内皮細胞培養系において、選択的MR阻害薬であるエプレレノンを10^<-7>、10^<-6>、10^<-5>Mの最終濃度で添加し、その8時間後から内因性GCであるハイドロコルチゾンおよび合成GCであるメチルプレドニゾロンを10^<-7>、10^<-6>、10^<-5>Mの最終濃度で添加し、GC応答配列によるdual-luciferase reporter assayを用いた転写活性評価、dihydroethidium染色によるsuperoxide産生評価、ならびにウエスタンブロッティングによる内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の蛋白発現および活性化(Ser1177リン酸化)の評価を行った。ハイドロコルチゾンおよびメチルプレドニゾロンによるGC応答配列の転写活性亢進は、エプレレノンにより濃度依存性に抑制された.また、ハイドロコルチゾンおよびメチルプレドニゾロンによるsuperoxide産生増加はエプレレノン10^<-5>Mにより抑制され、eNOSの発現および活性化の抑制は、エプレレノンにより濃度依存性に改善した。これらの結果はGC過剰がMR活性化を介して血管内皮細胞での酸化ストレス増大とNO産生低下をきたし、血管内皮機能低下を惹起することを示唆するものである。エプレレノンはGC過剰による高血圧ならびに動脈硬化症などの心血管合併症に対して予防・治療薬となる可能性がある。
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