研究概要 |
慢性腎臓病(chronic kidney dsease : CKD)患者では心血管病合併症が死因の第一位を占め保健衛生および医療行政における重大な問題とっている.我々は,可溶性FLT-1は腎臓が心血管の恒常性維持のために血中に分泌する重要な分子である可能性を発見し,さらに機能の低下した腎臓での本分子の産生低下が腎不全時に加速される動脈硬化症の発症に直接的な影響を及ぼすことを提唱した.本年度に実施した研究の成果により,(1) ヒト試料を用いて可溶型Flt-1が腎臓で産生され腎静脈を介して大循環系に分泌されること。(2) 腎臓での可溶型Flt-1産生がCKDの重症度に比例して低下すること。(3) ヒトCKD症例で、血中の可溶型Flt-1濃度がCKDの重症度に比例して低下すること(4) CKDの重症度に合わせて冠動脈硬化は重症化するが、CKD症例で冠動脈の重症度と血中のPIGF/可溶型Flt-1比が上昇すること(5) 動脈硬化のモデルマウスであるApoEノックアウトマウス(ApoEKO)に腎不全を作成すると、ヒトと同様に腎臓での可溶型Flt産生が低下し、血中の可溶型Flt-1濃度が低下すること。(7) ApoEKOに腎不全を作成すると動脈硬化が増悪すること。(8) リコンビナント可溶型Flt-1を作成し、ApoEKOの腎不全モデルマウスに投与すると、動脈硬化の増悪を有意にレスキューできること。(9) 可溶型Flt-1を投与している大動脈では対照と比べ有意に大動脈プラーク内へのマクロファージの浸潤が少ないことを確認し,Circulation誌(2009;120:2470)に発表した。
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