研究概要 |
動脈硬化症を原因とする心血管病合併症は慢性腎臓病(chronic kidney disease : CKD)患者での死因の第一位を占め保健衛生および医療行政における重大な問題とっている.我々は,可溶性FLT-1は腎臓が心血管の恒常性維持のために血中に分泌する重要な分子である可能性を発見し,さらに機能の低下した腎臓での本分子の産生低下が腎不全時に加速される動脈硬化症の発症に直接的な影響を及ぼすことを提唱した.本年度においてはCirculation(2009;120:2470),Am J Cardiol(2009;104:1478)に発表した検討結果に基づいて,1)CKD患者における血中可溶性FLT-1値と長期的な心血管イベントの追跡すること,2)動脈硬化発症ワタナベウサギに腎不全を合併するモデルを作成して動脈硬化病変の変化を観察すること,および3)腎不全合併ワタナベウサギにリコンビナント可溶性FLT-1を投与することの効果について検討している. CKD患者において採血時の可溶性FLT-1および胎盤成長因子(PIGF)は平均60ヶ月の追跡期間における総死亡および心血管イベント発症に対する予後不良の予測因子である可能性が認められた. ワタナベウサギに3/4腎摘を作成することによりCKDの状態を作成することが可能であることを確認し,現在動脈硬化病変の病理学的検討,リコンビナントタンパク投与の影響を検討している.
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