《背景》慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、喫煙を主因とし気道炎症から進行性の気流制限を呈する病態である。近年COPD患者は、末梢血中hsCRPやTNF-a上昇が報告されており、全身性炎症疾患と捉えられている。また、多くの全身症状(心不全、痩せ、II型糖尿病、骨粗鬆症、抑うつ等)を合併するが、その詳細はまだ不明な点が多い。逆に基礎疾患背景ごとの、COPDの合併頻度、炎症・酸化状態の評価、予後の検討は重要な研究課題である。 《臨床的研究》現在、各内科(糖尿病代謝科、循環器内科)外来通院中で、40歳以上かつ有喫煙歴の患者を順次登録し、各基礎疾患ごとのCOPD合併頻度、全身炎症の程度、酸化ストレス状況、全身病態への影響等を検討している。現在中途段階であるが、各内科でのCOPD合併の頻度は、疫学調査により報告された数値に比して、有意に高いものであった。これに関し途中経過での解析を、Chest Forum 2010において発表した。この結果は、他科の基礎疾患患者にCOPDが多く潜んでいることを示唆しており、重要な知見である。また研究計画に沿って、患者の登録は進んでいる。 《基礎的研究》我々は、培養気道上皮を用いて、COPDの主因である喫煙刺激(CSE)による気道上皮細胞の老化とそれに対する各種炎症性サイトカイン(IL1β、IL13)の効果を検討した。CSE刺激により、培養気道上皮は用量依存的に老化を示し、SA-β-Gal発現が増強した。これに対し、IL-13刺激は老化を増強する傾向がみられ、一方IL-1βは老化を軽減する傾向がみられた。さらにRT-PCRによる解析により、IL-1βのCSE誘導性老化に対する抑制効果については、p21の発現抑制を介したものであることが示唆された。この成果は、2009年ウイーンでの欧州呼吸器学会にて発表された。
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