《背景》慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、喫煙を主因とし気道炎症から進行性の気流制限を呈する。近年COPDは、末血中のhsCRPやTNF-・上昇を伴う全身性炎症疾患とされている。一方、COPDはしばしば心疾患や糖尿病等を合併するが、これらも血管内皮炎症や脂肪組織炎症を背景とした全身性炎症性疾患の側面を持つ。基礎疾患背景ごとの炎症・酸化ストレス状態の評価、予後の検討は重要な研究課題である。 《研究内容・意義・重要性》循環器内科、糖尿病代謝内分泌内科、呼吸器内科を受診した40歳以上の喫煙歴のある患者にスパイロメトリーを施行し、COPDの診断をおこなった。同様に基礎疾患の無い群を健康喫煙者とした。計117名がリクルートされた(平均年齢64.1±9.9歳、男/女比108/9)。基礎疾患の内訳は糖尿病64名、心疾患46名、COPD54名(重複有)、また基礎疾患無が12名であった。COPD病期I/II/IIIが14/38/2名であった。登録後から前向きに病態経過観察をおこなった(各1~2年)。項目は、全患者117名を対象に、上気道感染症、全入院、全死亡、またCOPD54名を対象に急性増悪、入院、死亡に関するリスクを検討した。 結果、COPDは呼吸器感冒のリスクを亢進させ、スタチンの使用はこれを低下させた。またCOPDは単位年あたりの入院頻度が有意に高かった。死亡は1名と少なく、またCOPD患者を対象とした増悪と入院も病期が若いためイベント数が少なく、有意なリスク解析はできなかった。傾向として全身炎症や酸化ストレスの高い患者はイベントリスクが高く、スタチン使用はリスクを下げる傾向がみられた。これらの結果は、2012年度日本呼吸器学会、米国胸部疾患学会で発表予定、学術論文投稿準備中である。各基礎疾患による全身炎症や酸化ストレスの違いとスタチンの有用性が示唆されており、重要な成果と言える。
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