研究概要 |
【特発性肺線維症におけるアダプター分子の関与】 1.対象組織の選定:臨床及び画像所見により特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis ; IPF/UIP)あるいは非特異的間質性肺炎(nonspecific interstitial fibrosis ; NSIP)を疑われ外科的肺生検を行われた18名について病理所見を検討した。線維化の時相、間質への細胞浸潤、膠原線維増生を伴う線維化、線維芽細胞の増生、ポリープ型腔内線維化、蜂窩肺の有無を評価し、臨床病理学的にIPF/UIP9名、NSIP9名に分類されたものを対象とした。 2.特発性肺線維症病理検体におるアダプター分子CRKの発現:CRKの免疫染色を施行し発現細胞及び発現強度を評価した。NSIPと比較しUIPにおける膠原線維増生を伴う線維化病巣部分においてCRKは線維芽細胞に発現していた。また、過形成性のII型肺胞上皮への発現も正常肺胞上皮と比較して発現が強く認められた。以上の検討よりUIPの発症、進行において線維芽細胞及び肺胞上皮細胞におけるCRKの関与が示唆された。 3.肺胞上皮細胞株におけるCRK及び関連分子の発現検討及びCRK強発現細胞株の樹立:肺胞上皮様細胞株(A549)においてCRK及びCRKの上流分子であるPaxillin,p130CAS,下流分子であるDock180,C3Gの発現を免疫ブロット法を用いて検討した。A549細胞ではCRKI、CRKII及びCRK関連分子の発現が認められた。肺線維症発症機序に関与するとされる肺胞上皮のアポトーシス及び上皮-間葉移行におけるCRKの関与を調べるために、レトロウイルスベクターによるCRKI,CRKII遺伝子導入を行った。免疫ブロットによりそれぞれの強発現A549細胞株の樹立が確認された。
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