研究課題
特発性肺線維症は平均生存期間が3年以下といわれる難治性肺疾患で、不可逆的な肺の線維化と肺胞の虚脱がおき、病理学的には強い線維化巣や蜂窩肺に近接する幼弱な線維化(fibroblastic foci)とその表層を上皮が覆う所見が病理学的特徴の一つである。その線維化周囲には炎症細胞浸潤や浮腫などを伴わず、炎症の修復過程としての線維化とは異なり、自立的な線維化が起きているのではないかと考えが提唱されてきた。その過程において上皮間葉移行(epithelial mesenchymal transition : EMT)の関与も示唆されている。現在のところステロイド薬を含む薬剤による抗線維化効果は限られており、EMTを含む線維化機序の解明や抗線維化薬の開発などが急務である。我々は腫瘍細胞の接着、増殖、運動などの悪性度に関与するアダプター分子の一つであるCRKに着目し、肺の線維化におけるCRK及びその関連分子の関与を検討した。まず特発性肺線維症患者の外科病理標本を用いてCRK,C3G,DOCK-180の免疫染色を行った。いずれの分子も正常肺胞上皮に比べて再生肺胞上皮及び一部の線維芽細胞に強く染色された。次に肺胞上皮細胞株であるA549細胞を用いてCRKI,CRKII過剰発現株を樹立した。これらの細胞にTGFbeta 5ngを加え72時間後にmRNA及び蛋白を回収しEMT関連分子の発現及びMMP-2、9の発現及び活性を検討した。また、運動能や浸潤能の検討も行った。CRKI過剰発現細胞株でもCRKII過剰発現細胞株でも無刺激状態ではEMT関連分子の増加は認めなかったが、TGFbeta刺激下ではCRKを過剰発現していない細胞株と比較してEMT関連分子の増加が見られた。肺線維症において肺胞上皮におけるCRKの発現はTGFbeta存在下でEMTを起こし線維化に関与する可能性が示唆された。
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