平成21年度においては、滋賀医科大学呼吸器内科において特発性間質性肺炎(IIPs)のうち通常型間質性肺炎(UIP)あるいは非特異性間質性肺炎(NSIP)と診断が確定している症例の画像データベースの作成を開始した。この2つのタイプの間質性肺炎を選んだ理由としては、同じ間質性肺炎であっても、この2つが治療に対する反応性や予後などの面において明らかに性格を異にするためである。このようにして作成された通常型間質性肺炎(UIP)・非特異性間質性肺炎(NSIP)のデータベースに登録された症例の画像データを「画像匿名化ソフトウエア」により処理することにより、完全な匿名化を実現することが出来た。その後、画像データをDICOMファイルのかたちでパーソナルコンピュータに転送して解析を開始した。現在は、通常型間質性肺炎(UIP)や非特異性間質性肺炎(NSIP)に特徴的とされる位置や大きさの情報(肺底部優位、胸膜直下優位、肺葉の容積縮小など)、形態情報(蜂巣肺、網状影、すりガラス陰影、浸潤影など)、その他の特徴的な所見(牽引性気管支拡張など)、病変の空間的均一性などにつき、数学的に解析可能な指標の作成に取りかかっている。今までのところ、画像データの3次元再構成に関しては、ほぼ確実に行うことが可能であり、更には、位置や大きさの情報を確認するために必要不可欠な肺葉の自動認識(葉間の自動認識アルゴリズムを含む)や肺容量の測定に成功している。また、形態情報の解析に必要な肺内血管や気管支の3次元的自動認識にも成功している。これらの成果を用いることで、今後は通常型間質性肺炎(UIP)や非特異性間質性肺炎(NSIP)にさらに特徴的な指標の開発を行うことを目標として研究を続ける予定である。
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