研究概要 |
特発性肺線維症(IPF)は胞隔炎として始まり、慢性炎症による肺胞破壊を伴って線維化に至る予後不良の難病である。しかしIPFの詳細なメカニズムについては不明で根本的治療法が存在しない。 Tetraspanins(TM4)はCD9, CD81, CD151などを含む細胞膜4回貫通蛋白ファミリーで、integrinやその他の膜蛋白と細胞膜にて複合体を形成し接着、遊走、増殖、癌転移などの機能に影響を与える。TM4は生体においてほぼすべての細胞に発現し、細胞膜上で複合体を形成しつつも、複合体蛋白の種類やTM4の分布の微妙な差異により異なる機能を発揮するユニークな蛋白ファミリーである。我々は今までに主要なTM4(CD9, CD81, CD151)についてKO mouseや臨床検体を用いた解析により肺癌、血管新生、肉芽腫形成、急性肺障害、COPD、骨粗鬆症におけるTM4の役割を解明した。TM4はintegrin、EGF receptorやTGF-aなど炎症、線維化と関係する分子との会合が報告されている。本研究の目的は肺線維症におけるTM4(CD9, CD151)の役割を臨床検体(肺線維症患者と健常人)と2種類のKO miceを用いて詳細に検討し、肺線維症の病態解明や新たな治療法の開発を目的とする。(1)肺線維症におけるTM4(CD9, CD151)の発現を正常組織と比較した。(2)WT miceとTM4 KO miceにBleomycinを経気道投与して、線維化の指標であるhydroxyproline (HOP)を生化学的に比較し、組織学的な解析と実験動物用スキャンin vivo CTシステムにより定量比較することにより炎症と線維化においてWTとKO mouseに差を見出した。(4) KO mouseから肺胞上皮を単離し肺線維症に関連する機能(増殖、遊走,アポトーシス)を比較解析中である。
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