セツキシマブは非小細胞肺癌に過剰発現しているEGFRに対するモノクロナール抗体である。肺癌領域における本剤への期待はきわめて高く、本剤が奏功する患者を選択するためのバイオマーカーの開発が急務となっている。我々はこれまでセツキシマブの抗腫瘍効果は主にそのADCC活性によることを明らかにしてきた。最近このADCC活性を担うNK細胞が標的細胞表面上に発現するNKG2Dリガンドにより活性化されることが明らかになってきた。そこで肺癌細胞表面上のNKG2Dリガンド、あるいはそれが血清中へ遊離された可溶性NKG2Dリガンドを測定することで、抗EGFRモノクロナール抗体セツキシマブの肺癌における新しい効果予測因子(バイオマーカー)を開発することを目的とした本研究を計画した。 我々は平成21年度研究で、主に培養肺癌細胞株を用いて、腫瘍細胞表面上のNKG2Dリガンド量、培養液中に遊離する可溶性NKG2Dリガンド量を測定し、それらが末梢血単核球のセツキシマブADCC活性に及ぼす影響を検討してきた。その結果、腫瘍細胞表面上のNKG2DリガンドはADCC活性を増強するが、培養液中可溶性NKG2DリガンドはADCC活性を抑制することを明らかにした。この本年度成果の一部を第49回日本呼吸器学会総会International Symposium (2009年6月東京)(招待講演)において発表した。
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