セツキシマブは非小細胞肺癌に過剰発現しているEGFRに対するモノクロナール抗体である。肺癌領域における本剤への期待はきわめて高く、本剤が奏功する患者を選択するためのバイオマーカーの開発が急務となっている。我々はこれまでセツキシマブの抗腫瘍効果は主にそのADCC活性によることを明らかにしてきた。最近このADCC活性を担うNK細胞が標的細胞表面上に発現するNKG2Dリガンドにより活性化されることが明らかになってきた。そこで肺癌細胞表面上のNKG2Dリガンド、あるいはそれが血清中へ遊離された可溶性NKG2Dリガンドを測定することで、抗EGFRモノクロナール抗体セツキシマブの肺癌における新しい効果予測因子(バイオマーカー)を開発することを目的とした本研究を計画した。 我々は平成23年度研究では昨年度に引き続いて主に実際の肺癌患者における可溶性NKG2Dリガンドの測定と、予後との相関を検討した。その結果1.手術を受けた肺癌患者において末梢血可溶性NKG2Dリガンドは残存腫瘍量、手術の根治性と相関した。2.化学療法をうけた肺癌患者において、末梢血可溶性NKG2Dリガンドは治療効果(腫瘍縮小効果)を反映した。また患者予後と可溶性NKG2Dリガンド量は逆相関した。これらのことから可溶性NKG2Dリガンドは体内の腫瘍量や治療効果を反映し、宿主の免疫能に影響を与えることで予後に相関していることが示唆された。
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