研究課題
肺腺癌の前癌病変とされる異型腺腫様過形成(atypical adenomatous hyperplasia : AAH)は、末梢気道上皮の肺胞置換増殖性病変である。細気管支肺胞上皮癌(bronchioloalveolar carcinoma : BAC)は、2cm以下の肺腺癌を腫瘍内に線維化巣を認めない野口A型、肺胞虚脱型の線維化を認めるB型、活動性線維芽細胞の増生を認めるC型に分類され、A型とB型の予後は極めて良好であり、生物学的には前浸潤性病変と考えられている。A型、B型よりC型の浸潤癌に至る過程を、当科で作製したexon 19[15bp in-frame deletion (nucleotides 2242-2256)SP-C-Egfr mutant-SV40]のEGFR遺伝子改変マウスの肺腫瘍組織を用いて検討中である。EGFRシグナル伝達経路(pEGFR、pAKT、pSTAT3、pMAPK)の蛋白発現の差をWestern blottingおよび免疫組織染色で検討した。2週令のEGFR遺伝子改変マウスは、野生型に比べいずれも増強し、EGFR遺伝子の下流のシグナル発現充進が確認された。8週令のEGFR遺伝子改変マウスのpSTAT3の免疫組織染色では、その発現は腫瘍の中心部より腫瘍周囲の気管支肺胞上皮癌の成分に強く認められた。また、EGFRのチロシンキナーゼ阻害剤であるgentinib 5mg/kgを7週令のEGFR遺伝子改変マウスに投与し、2日後および7日後にsacrificeして、マウス肺組織の蛋白を抽出した。7日目には腫瘍はほぼ消失しpEGFRの発現は低下していたが、pSTAT3は2日後で増強し、7日後ではやや低下していたもののまだ強い発現を残していた。EGFRの下流のシグナルと考えられているSTAT3の伝達機構の解析とそれを抑制する方法を模索している。
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