研究課題
細気管支肺胞上皮癌(BAC)パターンは肺腺癌の辺縁(進展部)で認められるが、その部位における上皮成長因子受容体(EGFR)関連シグナルについて検討した。2cm以下の小型肺癌24例中9例が非浸潤型で15例が浸潤型であった。免疫組織染色にてEGFRは腫瘍の辺縁のBACパターン部位よりも腫瘍中心部に多く発現していたが、STAT3は逆にBACパターン部位に強く発現していた。腫瘍径2cm以下の腫瘍では中心部のSTAT3の活性は浸潤型より非浸潤型で多く認められた。EGFR遺伝子変異の有無ではSTAT3の発現には差は認められなかった。EGFR遺伝子改変マウスの肺発癌モデルでは、STAT3は腫瘍中心部より辺縁のBACパターン部位により多く発現しており、2つの肺癌細胞株(EGFR遺伝子変異を有するPC-9、野生型のA549)ではJAK2/STAT3阻害剤(JSI-124)に対して同等の感受性が示された。すなわち、JSI-124のPC-9とA549における50%細胞増殖抑制濃度(IC_<50>)は、それぞれ0.026±0.004μMと0.027±0.002μMであった。JSI-124にゲフィチニブを併用すると、PC-9ではIC_<50>が0.016±0.005μMと有意に低下したが、A549ではJSI-124単剤と差は認められなかった。ウエスタンブロット法による蛋白発現を解析したところ、ゲフィチニブ投与後ではSTAT3の発現は不変であったが、JSI-124はそれを抑制した。また、EGFR依存性に増殖する肺癌ゼノグラフトモデルにおいて、microRNA-7を使用したEGFR mRNAの抑制により腫瘍縮小効果が認められた。臨床検体、細胞株およびマウスモデルを使用した以上の結果より、癌の進展にはSTAT3が関与し、JAK2/STAT3の阻害あるいはmicroRNA-7による抑制効果が期待できることが示された。
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Lung Cancer
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