肺癌組織83検体、肺癌細胞株15検体の遺伝子解析および細胞培養を行い、Rb/p16経路の不活化(RB1欠失・発現抑制、CDKN2S欠失・メチル化・発現低下)、p53経路の不活化(欠失・変異・発現低下)を経ずにテロメラーゼを活性化させて不死化していると考えられる肺癌細胞が特に腺癌において、高テロメラーゼ活性を示す検体の役半数に存在すること(肺腺癌組織42例中14例高テロメラーゼ活性、うち7例が両経路の不活化なし、低活性28例は全例不活化、P=0.0001)、この性質を示す肺癌細胞株(9肺腺癌細胞株中2株)は、両経路が不活化されている細胞に比し増殖能が同等でも軟寒天におけるコロニー形成能が高いことも見出した。うち一株は、さまざまながんでがん幹細胞マーカーであることが報告されてきたPROM1(CD133)を高発現しており、これらの結果をInt J. Oncol.に報告した(2010年5月掲載予定)。元来テロメラーゼが活性化されておらず有限寿命である正常体細胞は、Rb/p16経路およびTP53経路の不活化なしにはテロメラーゼを活性化させて不死化することができないことが報告されており、我々が見出した両経路が不活化されずに不死化している肺癌細胞は、元来テロメラーゼ活性を有している幹細胞に由来する癌細胞である可能性が示された。すなわち、テロメラーゼ陽性不死化がん細胞において両経路の不活化が存在しないことは、幹細胞由来の癌細胞、癌幹細胞由来である可能性も示された。
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