各種の改変アデノウィルス(Ad5/3CMVluci、Ad5/3CMVGFP)については大量調整およびタイター測定が完了した。また、肺がん細胞株(H1299、H460、H157)を用いた感染実験において上記のウィルスによる遺伝子導入によりそれぞれ導入遺伝子の活性を確認した。実際にはAd5/3CMVluciウィルスについては感染細胞の融解液中のルシフェラーゼ活性をルシフェラーゼアッセイにより確認し、Ad5/3CMVGFPについては感染細胞におけるGFPの発現を蛍光顕微鏡により確認した。実際の臨床検体における癌細胞の検出についてはまず良性の胸水に培養癌細胞を定数混入した疑似癌性胸水を作成し、検出感度を測定した。血球成分が多数含まれる血性胸水の場合は、ルシフェラーゼ活性が非常に低く癌細胞の検出感度は1000個/mLであった。原因として赤血球によるウィルス感染の阻害が疑われたため、最初に赤血球融解処理を行った後にウィルス感染させることで検出感度の改善がみられた。最終的には癌細胞10個/mLまで感度を高めることができ、本法を用いて実際の臨床検体を用いた測定実験を行っている。実際に細胞診検査によって癌性胸水の確定診断を得ている7症例のうち、6症例でカットオフ値を超えるルシフェラーゼ活性を検出しており、有用性が示唆された。一方、細胞診検査で陰性の検体11例中6例において高値を示しているため、擬陽性所見であるかどうかについてはそれぞれの臨床例の経過とも合わせて今後検討を進める予定である。
|