平成21-22年度までに行った研究の成果から、EZH2がI期非小細胞肺癌術後の予後因子となる可能性が強く示されたため論文の作成を行い、Cancerに平成23年8月に電子版掲載、更に平成24年3月雑誌掲載となった(13.研究発表参照)。 一方、研究を発展させるため、EZH2による肺癌増殖機構を更に解明することを目的とした場合、EZH2のeffectorを同定する必要があると考え、ChIP-on-Chipを用いてEZH2の結合するDNA部位の同定を試みることとした。前段階としてEZH2抗体またはH3K27抗体を用いたChIP解析を行い、これらの抗体に対応する蛋白(EZH2、H3K27)が結合するDNA部位を抽出することから開始した。これまでにEZH2、H3K27が細胞周期、Wnt/βカテニンに対するシグナル伝達系などと関係している可能性を示した報告が散見することを考慮して、これらの経路に関与する既存の分子をあらかじめ選択して、抽出したDNAに対してPCRを用いて、検出を試みた。現在そのうち数種類の分子は検出が可能となり、ChIPによりEZH2、H3K27の結合するDNA部を抽出することが可能と判断して、抽出成分に対するtiling arrayを用いてEZH2、H3K27の結合するDNA部位をゲノムワイドに半定量的解析を行い、正確で詳細なeffector探索を行うこととして、開始しているところである。
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